横浜美術館で開催されている「モネ それからの100年」夜間特別鑑賞会に参加して参りました。鑑賞会ではミニレクチャーとして学芸員の坂本恭子氏より、見どころが語られました。今回は夜間鑑賞会ということで撮影許可がおりましたので、レクチャーの内容と展示風景の写真を併せてお伝えします。
まずは、今回の展覧会のタイトルでもある「100年」について。これは最晩年のオランジュリーの「睡蓮」の壁画への着手からの100年を指します。これまでの研究成果と今の視点から見たモネの面白さを、モネと後の世代の作家の作品を同時に展示することで発見を共有できる内容となっているとのことです。
展覧会では4つの章から成る構成となっていて、「新しい絵画へー立ち上がる色彩と筆触」、「形なきものへの眼差しー光、大気、水」、「モネへのオマージューさまざまな引用のかたち」、「フレームを超えてー拡張するイメージと空間」というテーマに分かれています。モネの作品は作品番号25番から最晩年のものまで25点がほぼ時系列に並んでいるとのこと。そして、モネの作品とモネの作品の特徴を共有しているのではないかと思える作品を並べて観れる構成となっているのがポイントです。作家の方自身も、モネが好きというわけではないがそういう見方があるのかという意外な選出もあったとか。坂本氏はそれぞれのテーマから何点かモネの作品の特徴と共に紹介されました。
第1章「新しい絵画へー立ち上がる色彩と筆触」
第1章「新しい絵画へー立ち上がる色彩と筆触」からは、日本初公開でジベルニーに引っ越す前年に描かれたという「ヴィレの風景」とジョアン・ミッチェルの「紫色の木」。坂本氏はそれぞれの絵を拡大した画像を用いて、その特徴を説明していました。
色を混ぜずに置き、網膜の中で混ざるモネの筆触分割とルイ・カーヌの樹脂絵の具と金網から成る色彩の影と蕩けるような色についての解説では、ルイ・カーヌが「色の喜びを描いている作家」としてモネ、マチスを挙げ、「それを引き継ぐのが自分」としていたと紹介されていました。
第二章「形なきものへの眼差しー光、大気、水」
第二章「形なきものへの眼差しー光、大気、水」ではまず、乱反射する水面、大気、風景との間にある独特の色合いを色の重なりで表現した「セーヌの日没、冬」とモーリス・ルイスの「金色と緑色」の薄く重ねて染み出してくる色について解説がありました。
オーロラのような画面が「印象的なテムズ河のチャリング・クロス橋」と松本陽子氏の「振動する風景的画面Ⅲ」、ねっとりした色の層などの共通性指摘されているゲルハルト・リヒターの「アブストラクト・ペインティング(CR 845-8)」等も紹介されました。
第三章「モネへのオマージューさまざまな引用のかたち」
第三章「モネへのオマージューさまざまな引用のかたち」はタイトルの通り、モネの絵画から直接インスピレーションを得た現代の作品の展示です。
ロイ・リキテンスタインのスクリーンプリントは支持体が紙ではなくステンレスです。金属の板を加工しているため鏡のように鑑賞者が反射します。また、湯浅克俊氏「Light garden #1」のモネの庭を色彩を排して表現、児玉麻織氏の作品の放つ生命についても解説がありました。
第四章「フレームを超えてー拡張するイメージと空間」
最後となる第四章「フレームを超えてー拡張するイメージと空間」では、「睡蓮」を中心としたモネ後期の作品と「拡張性」をキーワードにイメージが拡張していき、鑑賞者が包まれて憩うていく空間が感じられます。
鈴木理策氏の「水鏡14, WM-77」をはじめとする水面、見る角度によって色が変わる小野耕石氏の「波絵」、福田美蘭氏の「睡蓮の池」など実像と虚像の重なり、一致がキーとなっています。例えば、「睡蓮の池」はレストランのガラス面に夜景と室内という虚像と実像が同じ画面に存在する作品です。今回のための新作「睡蓮の池 朝」という新作も展示されています。
最後にウォーホルの「花」の展示風景を紹介し、睡蓮がインスタレーションアートの先駆けとなったかもしれないことを示唆されました。
モネの作品と20世紀アート、現在活躍中のアーティストの作品が同時に見れるこの展示会。キャッチコピーに「わたしがみつける新しいモネ。」とあるように、鑑賞することで、モネの新しい魅力を鑑賞者の方に感じ取ってほしいと坂本氏は締めくくられました。
モネ それからの100年
会期:2018年7月14日~9月24日
会場:横浜美術館
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
電話番号:045-221-0300
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで、9月14日、15日は20:30分まで)
休館日:木(8月16日は開館)
料金:一般1600円 / 大学・高校生1200円 / 中学生600円 / 小学生以下無料