今回は、2019年1月12日(土)から2月17日(日)まで、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館にて開催される「絵画のゆくえ2019 FACE受賞作家展」の内覧会にお邪魔してきました。
『FACE(損保ジャパン日本興亜美術賞)』は2013年に創設された公募コンクールで、年齢・所属を問わない新進作家の登竜門として、美術評論家による作品本位の厳正な審査によって、真に力があり将来国際的にも通用する可能性を秘めた作品を入選とし、授賞しているそう。300点程の作品を1対1で審査する他にはない全国規模の公募展で、審査員も材質くらいしか質問できないほどだとか。
今回の展覧会では、「グランプリ」受賞作品とFACE2016からFACE2018までの3年間の「グランプリ」「優秀賞」受賞作家たち11名の、近作・新作約100点を展示し、受賞作家たちの受賞後の展開を紹介しています。 展示はそれぞれ11のブースに分かれており、各作家の世界観を楽しめるようになっています。また写真撮影もフラッシュなしであればどなたでも可能です(ただし常設展示の撮影は禁止されています)
FACE2016
まず入って一番に目に入ってくるのは、FACE2016グランプリの遠藤美香さんの作品〈宙返り〉。大きな版画作品でその大きさと白黒の世界に圧倒されます。
その奥には唐仁原希さんの作品。
中世を思わせるような薄暗い空間の中に古典絵画のモチーフと現代の漫画やドールを思わせるような大きな瞳の人物が特徴的です。中でも目を引くのが<ママの声が聞こえる>
ご本人にお話を伺ったところ、視線のエネルギーを感じさせる作品にしたかったとのこと。果樹には具体的なモデルはなく、沸き起こる生命、熟れた果樹と共に、カラスと対比させて闇の恐ろしさを表現したとのこと。圧倒的な数の顔はまだ数えたことはないそうですが、一個一個はそんなに手数はかけておらず、視線の持つ強さを数で表現しています。
会場を進むと、松田麗華さんのストライプの世界。
三鑰彩音さんの色鮮やかで、髪が印象的なモチーフ。近くで見るとキラキラとした日本画の絵具がより鮮明にきらめきを表しているようです。
FACE2017
青木恵美子さんの作品は立体的で、立体が作り出す陰影や反射する光は紙や画面からは伝わりにくい奥行きを生み出しています。
そして、私がとても好きだった大石奈穂さんの作品。
これも間近で見た時の溶けそうな独特の質感は生で見てこその印象です。大石さんにお話を伺ったところ、自分の心の形の輪郭のなさ、自分を信じきれない部分を体で表現していて、タイトルにも融点とある通り、溶けそうな感じを意識しているとのこと。
また、他の作品の質感も独特で、ネコの絵も内側に光を湛えているような、それでいてぬるっとしている質感を感じるような作品でした。色彩だったり、コントラストがはっきりした作品が多いブースが多い中、独特の雰囲気が好きでした。
村田悠介さんの<scope_>は人がカラフルな点になっていてとても面白かったです。
Face2018
仙石裕美さんの作品はPCやスマホの画面で見るよりも実際に見たほうが大きさを感じて迫力があります。
生き生きした表情と動きに加え、実際で見た時の透明感が素敵でした。
そして、最後に強い印象を残すのは井上ゆかりさんの作品です。
海の風景の中に、黄色い空、そしてさまざまなモチーフたち。まとめる必要はないと思い切り、思った順に描いたというそれらのモチーフは、計算しないで正直に描かれたからか、絵の中にいくつもの物語を共存させているようです。
<遠景>の中にも、人やライオン、犬や人形、アジアの邸宅などが描かれています。この色じゃないとだめだったという空は黄色地に白の模様で、オルゴールの音を表現したかったとのこと。
現代の新進の作家の方たちの作品を一堂に見られるこの機会に、「絵画の行方」のヒントを見つけに行かれるのも良いのではないかと思った展示会でした!
さいごに、お忙しいところお話を聞かせてくださった作家の方々にお礼申し上げます。
【「絵画のゆくえ2019 FACE受賞作家展」展覧会情報】
会 期: 2019年1月12日(土)~2月17日(日)
休館日: 月曜日(ただし1月14日、2月11日は開館、翌火曜日も開館) 会 場: 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
(住所/新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)
開館時間:午前10時-午後6時 ※入館は閉館30分前まで
観覧料: 600円(高校生以下無料) ※20名以上の団体は100円引
主 催: 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞社
協 賛: 損保ジャパン日本興亜
一般お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
ホームページ:http://www.sjnk-museum.