丸の内の三菱一号館美術館で開催されている『1894 Visions ルドン、ロートレック展』へお邪魔してきました。三菱一号館美術館の開館10周年を記念した一連の展覧会の最後を飾る展覧会です。三菱一号館が竣工した1894年をテーマに、ルドンとロートレックに注目した展示です。1894年をキーワードとした6つの章に分かれていて、ルドン、ロートレックだけでなく、同年代の著名な画家の作品が多く展示されています。19世紀末はヨーロッパだけでなく古代エジプト、アラブ、中国や日本等のアジアから多くの美術品がパリに集まり、また万国博覧会(1889年)人や物が行き交っていました。
ルドンとトゥールーズ=ロートレックの周辺
Chapitre 1は19世紀後半、ルドンとトゥールーズ=ロートレックの周辺というテーマで、モロー、ミレー、ピサロ、ルノワール、モネ、セザンヌ等の作品が展示されています。ルノワール、モネ、シスレー、ピサロ、ドガは1874年の第1回印象派展を開催したメンバーでもあります。アカデミーと印象派というと対立をイメージしますが、ルドンとロートレックはアカデミーの画家のアトリエで学び、印象派の影響を受けていたとのことです。第8回印象派展にはルドンも「秘密(囚われ人)」で参加しました。
NOIR—ルドンの黒
Chapitre 2はNOIR—ルドンの黒と題され、その名の通り、オディロン・ルドンの黒で描かれた作品が並びます。モネと同じ1840年に生まれたルドンは「黒は本質的な色」と言いました。石版画集「夢の中で」を出版したのが1879年で、今回の展示ではそれ以前の作品も見ることができます。
画家=版画家 トゥールーズ=ロートレック
Chapitre 3は「画家=版画家 トゥールーズ=ロートレック」と題され、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックのルドンの生まれた24年後、伯爵家の長男として生まれながら画家を志し、キャバレーとそこに集う人々等をカラーリトグラフで描きました。展覧会のポスターにもなったのが当時のカリスマシャンソン歌手アリスティド・ブリュアンを描いた作品です。展示室内では、リトグラフと油彩を並べて見ることができます。
1894年 パリの中のタヒチ、フランスの中の日本
Chapitre 4は「1894年 パリの中のタヒチ、フランスの中の日本」というテーマで、ピサロ、モリゾ、ロートレック、ゴーギャン、ヴァロットン等の作品が展示されています。
東洋の宴
Chapitre 5は「東洋の宴」で、パリに留学し、絵画を学んだ山本芳翠、黒田清輝、藤島武二、青木繁、梅原龍三郎の作品が展示されています。
近代—彼方の白光
Chapitre 6は「近代—彼方の白光」というタイトルを冠し、セザンヌ、ルドン、モネ、ルノワール、ドニ、ボナール、セリュジエ等の作品を展示しています。何と言っても、メインはルドンの《グラン・ブーケ(大きな花束)》(1901年)です。248.3×162.9cmという巨大なパステル画は、パトロンであるドムシー男爵のシャトー(城)の食堂を彩るために製作されました。全部で16点の作品のうち、他の15点はオルセー美術館に所蔵されています。
Chapitre 6の後半はルドンとナビ派を中心に、ナビ派の手本となったセザンヌやゴーギャン、そしてルドンの作品や1894以降の印象派としてモネやルノワールの作品、ルドンがナビ派に与えた影響としてナビ派の画家の作品が展示されています。グラン・ブーケを発表した年にロートレックが死去、そしてルドンも1916年に死去していますが、最後のポール・セリュジエの《消えゆく仏陀—オディロン・ルドンに捧ぐ》(1916年)が展示会の締めくくりとして、とても切ない、しかし力強く生きた証のような作品でした。近代、新しい表現方法や新しい媒体での作品を残したルドンとロートレック、とても良い展覧会でした。
※今回は特別な許可を得て展示室内を撮影いたしました
1894 Visions ルドン、ロートレック展@三菱一号館美術館
2020年10月24日~2021年1月17日
主催│三菱一号館美術館 日本経済新聞社
後援│在日フランス大使館/
アンスティチュ・フランセ日本
協賛│大日本印刷
企画協力│岐阜県美術館
展覧会では無料で音声ガイドサービスが利用できます。機械の貸出もありますが、スマホにガイドアプリをインストールすると、会期中、ガイドが再生できるのでおすすめです。
入場制限があるため、詳しくはチケットのページでご確認ください。